Everyone needs a coach.

鈴木義幸 | 2010年03月17日

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先日、メディアトレーニングなるものを受けました。

メディアのインタビューを受けた際に、
いかに短い言葉でわかりやすく、誤解のないようにこちらの意図を伝えるか。
また、こちらの意図とは違うストーリーに誘導されそうになったときに、
いかにレールをこちらが進みたい方向に敷きなおすか。そうしたことを学びました。

メディアトレーニング自体とても勉強になったのですが、
一番印象に残ったのは、
トレーニングが終了に近づいたときにトレーナーから発せられた次の言葉でした。

「あるアメリカ人で、メディアトレーニングの権威と呼ばれている人がいます。
 もちろん彼自身もメディアのインタビューを受けることがあるわけですが、
 その対応の仕方は本当に見事です。
  
 その彼が日本に来るたび私のところに連絡をしてきて、
 メディアトレーニングを受けたいという。私は聞きました。

 『あなたはメディアトレーニングの権威ですよ。
  そのあなたがどうしてトレーニングを受けようとされるんですか?』。

 すると、彼はこう答えたのです。
  
 『だからこそです。トップであり続けるには自分を磨き続けなければならない』と」


残念ながら日本のビジネス界でこうした意見は少数のように思います。

企業の取締役というポジションに上り詰めた方で、

「取締役であり続けるためには自分を磨き続けなければならない。
 だから自分のリーダーシップ、マネジメント能力の向上のために、
 トレーニングを受けるんです」
 
と公言される方は、私が存じ上げている範囲ではそれほど多くはありません。


先日、ある大手企業の専務にエグゼクティブ・コーチングをご紹介差し上げたところ、明快にこうおっしゃいました。

「取締役っていうのは、選ばれた人たちですよ。
 リーダーシップを発揮して、実績を十二分に上げてきて、そのポジションに就いた。
 その人たちに今さらコーチはないでしょう」

成功体験を積むと、どうしても強固な信念体系ができあがります。
「こうすればうまくいくはずだ」「リーダーとはこういうものだ」と。

しかし、環境は常に変化しています。周りの状況は驚くほどのスピードで変わっている。
絶対にうまくいく考え方、やり方などは決してありません。
状況に応じて、さらに自分を進化させ、成長させなければ、
組織の未来に向けての動きは失速してしまうわけです。

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3月8日発行の『日経ビジネス』の特集は「うちの社長は裸の王様」でした。
周りの声を受け付けず、自身の変化を望まない社長が、
いかに会社を間違った方向に導くか。

逆に、耳の痛いことを言ってくれる社外取締役などを積極的に採用している企業がいかに強靭になっていくかが述べられています。

この特集では、「他国に比べ、日本の取締役会には極端に社外取締役が少ない」という事実についてもこう言及しています。

社外取締役がゼロという一部上場企業は、全体の54%に上っているということ。
また、トヨタ自動車の取締役の数は29人と上場企業中最多人数を誇るが、
社外取締役の数はゼロだということ。
実際そうであるかどうかは別にして、ガバナンスが機能していないのではないかという疑念が、アメリカ議会で問題になったことは周知の事実です。

もしかすると、社外取締役が少ないというのは、自分の信念体系のみを信じるという、日本企業のあり様を示しているのかもしれません。

しかし、大きな責任を担っている以上、
トレーニングを受けたり、社外からのフィードバックに触れたりすることで、
自分たちが当たり前に思っている信念を再検証し、
自身の行動や組織の行動を再選択するということは、
決して欠かしてはいけないスタンスではないかと思うのです。

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グーグルの創業者であり、現CEOであるエリック・シュミット氏が
CNNのインタビューに答えて次のようなことを言っていました。

「2002年、ボードメンバーの一人から、
 あなたにはコーチが必要だ、と言われました。

 『この私にコーチ? 私は成功しているCEOですよ。
  なにか私が間違ったことをしましたか?』。

 そのボードメンバーは言いました。
 
 『誰にでもコーチは必要ですよ。全ての有名なアスリートが、
  パフォーマーがコーチをつけている。あなたにも必要です』。

 言われてみればその通りです。私はコーチをつけました。
 そして、コーチは私にとって、とても役に立ちました。
  
 今はこう思います。誰にでもコーチが必要です。
 自分の振る舞いを観察し、フィードバックしてくれる人が。
 なぜなら、人が決してうまくできないことの一つは、
 自分自身を他人が見るように見ることだからです。
 コーチは常に外から自分を見てくれている」。

ほとんどの取締役がエグゼクティブ・コーチングを紹介されたときにする反応は、エリック・シュミット氏が最初に発した言葉と同じでしょう。

そこでひるまずに、周りからのフィードバックを受け、
自分を変化させることの重要性を語り、理解していただくことが、
エグゼクティブコーチとしての自分の使命だと思っています。

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日経ビジネスオンラインの誌上対談をさせていただいた大人の学習の専門家、東京大学准教授の中原淳先生が、次のような主旨のことをおっしゃっていました。

「人は他人との交流を通してでしか変われません。
 『他者に出会い、フィードバックを受けることで変容が起こる』ということを
 若いうちに学習していると、いくつになっても学習環境を自分でデザインすることができます。
 だから『学習の仕方を学習させる』ことが何よりも大事だと思うんです。
 学習の仕方を学んでいないと、
 経験に基づいた信念体系にしがみつく『おじさん』になってしまいます」。


日本に、変化することを止めてしまった『おじさん』を増やしてはいけない。
最近、強くそう思うのです。

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