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因果を崩す

鈴木義幸 | 2007年12月19日

これまで、1,200回近く集合型のコーチングトレーニングを、
企業のマネジャーに実施しました。

「一言で言うと、どういう課題がありますか?」

と聞くと、最も多く返ってくる答えが、

「部下が○○で困る」

というものです。

部下が受身で困る。
部下が考えなくて困る。
部下が言われたことしかやらなくて困る。
部下が自分の実力を過大評価して困る。
部下が仕事ができなくて困る。

などなど。

こうした答えを聞くと、まずマネジャーの方に尋ねます。

「どこで、そうだということがわかったのですか?」

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

先日もあるマネジャーとこんなやりとりをしました。

「部下が受身で困るんですよ」

「どうして受身だということがわかったんですか?」

「自分からアイディアを出してこないからです」

「自分からアイディアを出してこないということが、
どのように受身であるということにつながるんでしょうか?」

「積極的であれば自分からアイディアを出してきますよね」

「そうですね。積極的であればアイディアを出す可能性は確かに高いですよね。
ですが、アイディアが出ないから受身と判断するのは早急ではないですか?」

「・・・そう言われると、そうかもしれませね」

「彼が積極的に振舞う場面はどんな場面でしょう?」

「そういえば、最近入ってきた後輩の面倒はよくみているみたいですね」

「そうなんですね」

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

1,200回の研修で、多くの方と多くのやりとりをしてきましたが、
行なったやりとりは、ほとんどこのパターンです。

人は周りの人を「概念化」して捉える傾向があります。
簡単に言えばレッテルを貼りがちなわけです。

この人は私との約束を破った、だからうそつき。

約束を破ったのは今回だけのこととするよりも、
うそつきというその人の特性にまで昇華させることで、
「次は注意してかかれよ」というメッセージを
自分自身に送ることができるからです。

このように、一般的に人は、
非常に少ないデータで人の傾向自体を判断しようとします。

何回の経験でそうした「因果」を特定するかは個人差がありますが、
遅かれ早かれ、人の頭は「因果」を描き出そうとします。

この子は自分から勉強机に向かわない、だから勉強がきらい。
この部下は自分に挨拶にこない、だから反抗的。
この上司は話すときに自分と目を合わさない、だから裏で何か考えている。

因果を特定することで、未来のリスクに備えることができるわけです。

しかし、一方で因果を強力に持ち込むと、
現実を見失ってしまうことにもなります。

一つの言葉で相手を括ることになるので、
見えなくなる現実がどうしても生まれてしまうわけです。

「部下は受身」と言ってしまったら、
部下の良いところ、強みは一切見えなくなってしまいます。

だから、「部下が○○だ」という表現を研修で聞いたら、まず聞くわけです。

どこでそう思ったのか。
その判断を導き出すのに、どれだけ十分なデータがあるか。
その判断をくつがえすようなデータはないのか。

自分の因果に疑問が生まれて、初めて、人は現実を見ようとします。
事実を捉えようとします。

そして、現実の中にこそ、多くの問題解決のためのヒントが溢れています。

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