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【解説】コミュニケーションとは?能力やスキルの前に知っておくべきコミュニケーションの本質と6つのヒント

【解説】コミュニケーションとは?能力やスキルの前に知っておくべきコミュニケーションの本質と6つのヒント
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はじめに

「コミュニケーションがうまい人」と聞いて、頭に浮かぶのはどんな人ですか?

その人のイメージは、あなたが「コミュニケーション」をどのようなものと捉えているかを表しているかもしれません。あなたがもっているコミュニケーションについての定義やイメージは、あなた自身のコミュニケーションを特徴づけ、そして、コミュニケーションの成果に何かしらの影響を与えています。

ここでは、コミュニケーションについて改めて考えることで、より効果的なコミュニケーションを実現するためのヒントを探求しましょう。

「コミュニケーション」の語源は「コミュニス(共有する)」

コミュニケーションとは伝えること?

社会で生きる限り、他人とのコミュニケーションをまったくとらずに生活することは非常に困難です。そのため、コミュニケーションに対する人々の関心はとても高く、世の中には、コミュニケーション能力の向上を謳ったトレーニングや書籍があふれています。そして、それらの多くは、いかにうまく「伝える」かに主眼を置いているものが多いようです。

「コミュニケーション」という言葉を検索すると、「伝達」「通信」「交流」「情報伝達」といった言葉が並びます。また、デジタル版大辞林には、「人間が互いに意思・感情・思考を伝達し合うこと」とあります。

「伝える」というと、一方向だけの矢印が頭に浮かびますが、「交流」や「伝達し合う」という表現からは、矢印が双方向に向き合っているイメージが頭に浮かびます。

「伝えたつもり」はなぜ起こる?

コミュニケーションの語源は、ラテン語のcommunisと言われています。この「communis」には、「共通の」「共有する」「分かち合う」といった意味があるようです。とすれば、コミュニケーションとは、「伝える」という行動以上に、何かを「共有」するためのプロセスといってもいいかもしれません。

コミュニケーションにおいて、しばしば「伝えたつもり」や「わかったつもり」といったミスコミュニケーションやその「不在」が起こるのは、この「共有する」という本来の目的、そして、伝え「合う」という点を意識していないからだといえるかもしません。

コミュニケーションはキャッチボール™ー「共に・双方向」へ

では、「共有する」という本来の目的、そして、伝え「合う」コミュニケーションとは、具体的にはどのようなものでしょうか。コミュニケーションをキャッチボールのイメージで考えてみましょう。

コミュニケーションは「完了」させるもの

キャッチボールをはじめるとき、AさんとBさんが一対一で向き合っています。まずAさんがボールを投げます。それをBさんが受けとります。そして、BさんはAさんに投げ返します。それをAさんが受けとります。これで、キャッチボールが一つ「完了」します。

コミュニケーションにも同じことが言えます。コミュニケーションをはじめるとき、まずお互いに向き合い、Aさんが話します。それをBさんが聞きます。そしてBさんはAさんに投げ返します。それをAさんが受け取ります。Aさんが投げたボールがAさんのところに戻ってきてはじめて、コミュニケーションが一つ「完了」します。

この「話す」と「聞く」の 2 つの役割をお互いが担うことで、つまりは双方向に関わることで、コミュニケーションは成り立ちます。

コミュニケーションの「未完了」とは

ところが、もしボールが戻らなかったらどうでしょうか?そこには「未完了」が生じます。

では、コミュニケーションの「未完了」というのはどのような状態でしょうか。未完了をもたらすものには、主に次の 4 つがあります。

  1. 不適切な間
  2. 受け入れがない
  3. 評価する
  4. 返事がない

一つずつ見ていきましょう。

1. 不適切な間

キャッチボールの目的は、キャッチボールそのものにあります。それを心地よくできるようになることが目的なのです。その際に大切なのが「間」です。次のような場合、キャッチボールのリズムは壊れてしまいます。

  • 間髪いれずに投げ返してしまう
  • 長く持ちすぎてしまう
  • 間がばらばらである
  • 間が持てずに、自分からボールを取りにいってしまう
  • 相手が投げる番なのに、自分が投げてしまう
  • 相手に時間を与えない
  • 沈黙を受け入れられない

2. 受け入れがない

コーチングの会話においては、「人それぞれの感性や考え、解釈がある」ということを前提に、まずは相手の話を最後まで聞き、そして同意できるところ、受け入れられるところ、相手の肯定的な意図などを見つけることが大切です。

<受け入れがない例①>
A「気分はどうですか?」
B「あまりよくないですね」
A「なんで?」

この場合、Bさんが気分が悪いという事実を受けとってから、次のコミュニケーションを始める必要があります。

<受け入れがない例②>
A「気分はどうですか?」
B「あまりよくないですね」
A「みんなは楽しそうですよ」

この場合も、AさんはBさんの投げ返したボールを受けとってません。Bさんは、気分が悪いことを非難されたように感じ、私の言うことは誰にも聞いてもらえないのではないか、といった自問自答を繰り返すことになるでしょう。

3. 評価する

相手が今この瞬間に思ったことや言っていることに対して「評価」を加えると、相手はそれ以上話す意欲がなくなるか、より強い自己主張をするようになってしまうものです。たとえば、自分が投げたボールとは違う色や大きさのボールを相手が返してきた場合がそれに該当します。

相手が今そう思ったのであれば、それがすべて。「相手の考え」に同意するかどうかは別にして、「そう思ったということ」に同意することはできます。同意がコミュニケーションを完了させます。「評価」をするとコミュニケーションは頓挫します。

4. 返事がない

返答がないと、ボールを投げた人は「なぜボールが返ってこないのか?」と、そのことについてずっと答えを探し続けることになります。しかも、その答えは、ボールを受けとった側が持っているわけですから、ボールを投げた側は、その答えを永久に手に入れられないことになります。その状態こそまさに「未完了」です。

同じように、

  • 提案したのに返事がない
  • メールを送ったのに返信がない
  • 声をかけたのに返答がない

これらはコミュニケーションの「未完了」になり、そのことがずっと「気掛かり」になっている状態です。いくつもの「未完了」を抱えることによって、それらのことに多くの注意を奪われエネルギーが下がっていきます。逆に「完了」するとエネルギーは上がります。

ここまで見てきてお分かりのように、コミュニケーションは必ず「完了」させなくてはなりません。未完了のコミュニケーションは、宙ぶらりんのままその人の中に蓄積され、今のコミュニケーションに影響を与えてしまいます。

自分は普段どんな風にやり取りをしているか、どんなキャッチボールをしているか、部下や同僚と、顧客と、そして家族や友人とのやりとりを振り返ってみてください。

コミュニケーションのキャッチボールがもたらすもの

「伝える」という関わりにおいても、キャッチボールは必要です。「伝えたつもり」「理解したつもり」「わかったつもり」が起きるのは、往々にして、そこにキャッチボールが欠落しているからです。

たとえば、自分から何かを伝えたら、最後に「どんな風に伝わりましたか?」「何か質問はありますか?」とキャッチボールを続ける。相手が何か伝えてきた時にも、「こんな風に理解しましたがあっていますか?」「もう少し●●について教えてください」とキャッチボールを続ける。そうすることで、ずいぶんとミスコミュニケーションが減るはずです。

そして、そうした内容や情報、目的の共有以上に、コミュニケーションのキャッチボールがもたらす大事なものがあります。

それは、「関わっている」という実感です。

コミュニケーションというと、どうしてもその内容や質、そしてそれによってもたらされる結果に注目しがちですが、それ以上に大事なのは、まずはコミュニケーションが「ある」こと。つまり、そこでキャッチボールが交わされていること。それ自体がとても重要なのです。

コミュニケーションを実現する6つのヒント

コミュニケーションにおいてうまくキャッチボールするためには、実際のキャッチボール同様、練習が必要です。と同時に、次のようなコミュニケーションの約束事を守ることが大切です。

1.始めようという意図をもつ

意図があって、初めてコミュニケーションが成り立ちます。
まずは「キャッチボールを始めよう」という意図をどちらかがもっている必要があります。

2.相手の同意がとれている

一見当たり前のようですが、実際には、相手がコミュニケーションを交わす準備ができていないのに、一方的にボールを投げつけているということが少なくありません。

3.適度な距離をとる

実際のキャッチボールと同様、近すぎても遠すぎてもキャッチボールは成り立ちません。相手との適度な距離があって、初めてコミュニケーションは成り立ちます。そこには物理的な距離、心理的な距離の両方が含まれます。相手を観察し、相手が許容する範囲まで近づく。同時に自分の緊張の度合いなども測りつつ、距離感を測りながらコミュニケーションする必要があります。

4.完了させる

自分が投げて相手が受け取る、受け取ったボールを相手が投げて、自分が受け取る。ここまでが、キャッチボールの1ユニットです。

5.受け入れる

「受け入れる」とは、相手に「同意」することではありません。話の内容を受け入れることと、相手がそう思っている、ということを受け入れることとは違います。相手がそう思っていること、そして相手の存在を受け入れるということです。

6.受け取りやすいボールを投げる

人は向き合うと、真剣になりすぎるあまり、無意識のうちに勝ち負けの構造に入ったりしてしまいします。すると、いつの間にかキャッチボールがドッジボールになってしまうことも。相手が受け取りやすいボールを投げるよう意識することも大切です。

おわりに: コミュニケーションとは?

さて、ここまで「コミュニケーションとは何か」について考えてきましたが、いかがだったでしょうか。

"コミュニケーションとは、共に目的地に向かうことであり、共有することであり、そのプロセスは「キャッチボール」である"

このことを意識するだけでも、おそらく選ぶ言葉や声のトーン、会話のタイミングや間が変わってくるはずです。

参考図書

「コミュニケーションはキャッチボール」

「コミュニケーションはキャッチボール」

著者:伊藤 守
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

「この気もち伝えたい」

「この気もち伝えたい」

著者:伊藤 守
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン

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